第4回を迎えるこの大会。新型コロナウイルスの影響により約10か月のブランクを経て漸くこの度再開まで漕ぎつけた。本来年5回の開催を予定していたが短縮され全4回のシリーズとなってしまった。実に残念である。以上の事により、この大会を以ってアングラーオブザイヤーも決定する重要な大会となった。
長い期間の沈黙を経て再開されるこの大会。皆様の中では忘却されていた感に思われたが実際参加者の公募を募ると、なんと予定人員は僅か3日掛からず埋まってしまった。皆様が待望していたのが実に良く解り、また有難いと感じずにはいられない。常連達もこの度の病疫で躊躇された方も居られるようだが、新規参加者がその穴を埋めてくれた。また出遅れてしまい参加出来なかった方も実に多かったと後程伺った。次年度はその辺りも対処できる様にしていきたい。一方そんな参加者達の熱い気持ちを受け止める市原園のたなご達はどうだろうか?二度に渡る試し釣りを行ったが相変わらずの魚の濃さである。逆に濃いが故の釣り辛い場面もある事が解った。果たして最適解を叩き出すのはどの選手か?帰りの車中でその話題になり、数名の選手の名前が挙がったがまさかその通りになるとはこの時点では車中の誰もが思わなかった。
さて大会当日、空は爽やかに澄み渡り放射冷却により非常に冷え込む正に晩秋の空模様である。如何やら風は無さそうな感じである。まずは一安心。準備を進めていると今回はいつもより受付時間を半時早めたので続々と選手の皆さんが来場して来る。良く顔を合わせる方もいれば実に前回の大会以来の方もいる。皆、再開を笑顔で祝福してくれた。実に有難い。受付後に新規参加の方へ試合の流れの簡単なレクチャーを行い、開会式が始まる。この度はつり人社八木編集長よりお言葉を頂き、また今回の新型コロナウイルスで亡くなられた方々に向け黙とうを行った。さあいよいよ始まる第一試合。今回はソーシャルディスタンスを保つ為8名により競われる。その中で勝ち上がれるのはわずか2名。実にどんな展開になるのであろうか。寒さを吹き飛ばす参加者の熱視線を受けながら、選手たちは続々と自分の釣り座に向かって行った。
釣り座に着くと自分の戦略に魚が応えてくれるか試し釣りをする者もいれば再度シモリバランスの調整を行う者もいる。実に人様々である。然し今までの試合と違うのは予備の竿を並べる方が殆どと言う事。今までの経験により培われたものであろうか。同じものを並べ仕掛けのトラブルを防ぐ予備だったり、魚の活性に合わせシモリスピードをチェンジする為のものであったり、戦略も実に個性がある。さて数分間の準備時間を経ていよいよスタート1分前。皆、竿を水面から離し構える。スタートの号令とともに長期間待ち望んだ選手たちの思いが放たれた。
序盤は魚の寄りが悪いのか暫しの沈黙があったが選手達の思いに応えて徐々に魚が集まり続々と釣れ始めた。然し安定した釣りを見せるのは東京たなご釣り研究会の猛者の川岸選手。物静かな方で釣りでも美しい流れる様なスタイルで次々と魚を抜き上げていく。当初追いすがったのはたなきちのオーナーである今井選手。この度は優勝を狙うので自らの協賛品は優勝には回さないで欲しいとの意気込み通りの試合運び。染谷,渡辺の決勝進出常連の両選手も続いていく。更にその後に続くのが梅内,小磯,須藤,多賀の各選手だがじりじりと離されていく。そんな様子が続いていたのだが中盤より今井選手が息切れか徐々にペースダウン。渡辺選手も同様な感じで竿を上げる回数が減っていく。このまま川岸選手の余裕の逃げ切りかと思われたが後半に強い染谷選手。糸ふけを取る穂先がハイペースでグルグルと回り始めた。ゾーンに入った証拠である。最終的にはこの二名での争いとなった。やがてタイムアップ。結果は川岸選手の逃げ切り。染谷選手届かずという結果に終わった。続いて今井選手であったが残念ながら今回は2名の勝ち抜け。後塵を拝する事となったが優勝を狙う意気込みは感じられた。
続いて二回戦目。今回の様な魚の状態を得意とする優勝の下馬評の高い増田選手が入っている組である。また優勝経験のある金子選手もいる。いつも決勝進出寸止めの今井⁽卓)選手がここで悲願の決勝進出を果たすのか。他にも横浜の雄の赤沢、宗像選手。奥様が決勝常連の在来師の池田選手。荻野選手はルーキーながら活躍を見せるのか将又女性ながら決勝進出経験のある川嶋選手が男性陣を押しのけるのか。中々楽しみな布陣である。こちらも暫しの準備時間後にスタート。開始早々増田選手が得意の表層攻めで次々と魚を仕留めていく。然し、今井、宗像、金子選手も黙っていない。気温が上がってきた事も含め誰が勝つかわからないハイペースで試合が進んでいく。このペースについていけない池田、川嶋、荻野、赤沢選手達が離され始めた。上位4選手の乱打戦の様相を呈してきた2回戦目。先に息切れした選手の負けであることは明らかである。増田選手のペースは待ったく衰えを知らない。やがて金子、宗像選手が離され始めた。今井卓選手だけはまだ喰らいついている。最後まで喰らいついたまま、2選手で50の大台を叩き出してフィニッシュ。両名が決勝進出を決めた。
日も高くなり三回戦が始まる頃に何故か急に南風が吹いてきた。店舗のあった以前とは違いこの場所は現在南風に弱い。まださ程ではないがどう影響が出るのか。気になるところである。さてこの3回戦目は優勝経験を持つ長島選手。今回は優勝を狙うと宣言する石川選手。女性ながら常に決勝入りを果たす巴御前もかくやの池田選手。静かな実力者木下選手。ここがホームである千葉タナ研の高木、山下、大塚選手。茨城の牛久周辺がホームの岡田選手など個性派揃いの組である。この度の急な風などものともせず結果が出せるのか楽しみである。いざ始まると試合開早々から長島選手が飛ばす飛ばす。やはり二人勝ち抜けを意識してかペースを緩めない。風で他の選手が苦しむ中、重めの仕掛けを駆使する所謂たな研スタイルと状況がマッチしている。もはや独壇場である。こうなると興味は2番手争いである。石川、池田、木下選手は同じ様なペースで釣りあげている。3番手グループに高木選手ら千葉タナ研グループと岡田選手が団子になっているが釣りあげる手数から追いつくのは難しいと思われた。中盤が過ぎても以前長島選手は止まらず独り舞台。2番手争いは石川、池田、木下選手達の一進一退のデッドヒート。誰が抜けるのか全く分からない状況。最後の最後で二人が手が止まった間隙を突き、池田選手が連続で魚を上げ何とか逃げ切り決勝戦を勝ち取った。三名とも40の大台に乗せる実力伯仲の3回戦であった。
最後の4回戦目は無冠ではあるが上位入賞常連の堀江選手がいる。増田選手とは1ポイント差で年間優勝を争っている。先に決勝進出を決めた増田選手には決勝進出を果たし、勝負を挑まなければならない。江戸たなご会の元副会長である小川選手も侮れない。前回、堀江選手と3位tieになっているこちらも因縁の組み合わせだ。東京たなご釣り研究会の事務局長である松田選手も今回参加して頂いた。川岸、長島両選手に続き決勝進出を決めるのか?西濱選手はひとつテンヤの販売をされていて福岡県より参加。遠方よりこの試合を楽しみに来て頂いている。前回は残念ながら決勝進出を逃したが今日はリベンジ。埼玉から参戦は八重樫選手。埼玉流の釣りを思う存分発揮してもらいたい。林選手はkazu-worksという海用のハンドメイドルアーメーカーを立ち上げており、最近でははたなごに釣りにも傾倒しているとの事。いつもの海の経験が活かせるはず。赤坂選手も今井卓選手と所属が同じ山崎の会のメンバー。今井選手の待つ決勝に駒を進められるのか?馬場選手もこの大会をいつも楽しみに来て頂いている。今回こそ決勝進出を決めて頂きたい。以上8名で争われる最終予選。川嶋理事の合図とともに始まった。しかし時間が進むにつれて南風が段々強まってきた。4回戦目は風に対処する経験値が問われる試合となってしまった。やはり風対策の経験値が少ない馬場、林選手がアタリの取りずらい中で順位を下げていった。残る選手は6名。判りずらい微妙な変化を着実に取っていく。これまた皆同じ様なペースで試合が進む。若干堀江選手が優勢な気がするがちょっとの事で変わってしまう差にすぎない。最早、誰が勝つのかわからない大混戦のまま試合が終了した。確認する為にカウンターの魚の数を伺うとやはり大混戦。20台に5名が犇めきあっていた。ギリギリ30で20台から脱出した堀江選手が1位通過。続いて29の一匹差で西濱選手が勝ち抜け。松田、小川選手が2~3匹の差で涙を呑む結果となった。以上を以って予選は終了。残るは敗者復活戦のみとなった。
さあ残りの二枠を狙い敗者復活戦が始まる。前回はあまりにも釣れなかった為に早掛け勝負であったが今回は通常通りのつ抜け勝負。いつも良く釣れる側は南風により釣り辛い状況になっているのが見て取れた。今日は真逆が良さそうである。予想の通りに真逆エリアの須藤選手、金子選手が勝ち名乗りをあげた。しかし残りの5位までは賞品の出るルール。赤坂、木下、川嶋選手がやはり強さを見せ、決勝に出れなかった鬱憤をここで晴らした。然し南風が強くなければまた違う結果となっていただろう。これで決勝の10名が決まり、ここで昼休憩となった。
今回は残念ながら女性参加者が少なかった為にレディース大会は行われなかったが総合順位で女性1位の池田選手に贈られる事となった。
※本人とわかる写真はご希望により掲載いたしません。
昼休憩も終わり決勝に残った川岸、染谷、増田、今井卓、長島、池田(奈)、堀江、西濱選手、そしてつ抜けで返り咲いた須藤、金子選手達が続々と試合会場へと足を運んだ。増田、堀江両選手はお互いの立場が解っているのかいつもと違い言葉が少な目だ。因みに今回初参戦で決勝に残った須藤選手は以前は鮎のツアーに参戦していたが、体力的な事でこのたなご釣りに転向、本大会に向けてこの30分での釣りの練習と努力を重ね望んできたとの事。決してフロックでは勝ち上がれない実力者揃いの決勝戦となった。そんな選手たちの熱気に気押されてか強く吹いていた南風も弱くなり絶好のコンデションで迎える事となった。しかし魚たちは4回戦もの予選でスレ始めている。当然技量も問われる決勝戦である。観客に変わった選手たちが固唾を飲む中、合図とともに煌びやかな仕掛けが宙に舞い、市原園のやや緑色に濁った水中へと吸い込まれていった。
やがて各選手達の見事な竿捌きによるアワセにより、次々と魚が宙を舞いそっと桶に取り込まれる。これは数えるのが一苦労なのが予想される。特に増田選手のペースが凄い。予選も凄かったが決勝でも更に輪をかけたペースである。一方、年間を賭けた勝負に挑んでいる堀江選手のペースが上がらない。一体何故?そんな堀江選手の不調を横目に川岸、長島選手が匹数を重ねていく。金子、染谷、今井卓、須藤、西濱選手達もエンジンがかかって来た様だ。一方元気が無いのは池田選手。予選で相当削られたのだろうか。後半の巻き返しに期待したい。中盤を迎え、川岸選手が未だ自分の釣りを崩さず淡々と桶に魚を入れている。増田選手の息切れを虎視眈々と待っているベテランならではの試合運びだ。他の選手は相変わらず団子レース。増田選手のペースには届かない。然しこれだけのハイペース。リズムが狂えばどうなるかわからないのだが後半も増田選手のペースは衰えない。何処まで続くのだろうか?そして堀江選手の復調はあるのか?残り時間が僅かになってきたところで染谷選手が竿を回す手が早くなってきた。金子、長島選手も同様のペース。これを見たのか西濱、今井卓選手も負けずに応戦する。そしてラスト1分が告げられても増田選手はペースを崩さない。そのままでフィニッシュ!見事逃げ切りに成功した。次は川岸選手。実力を遺憾なく発揮し貫録の2位。さて3位は今日の試合を象徴するような殴り合いの僅差。誰が獲ったかわからない。カウンターの音が鳴り響く中、次々と検量されていく。そしてこのバトルロワイヤルの殴り合いを見事制したのは30台から抜けだし見事40を釣り上げた優勝経験を持つ金子選手。染谷選手は2つ及ばずまたお立ち台を逃す結果に。その一匹差で長島、西濱選手がtieでつけた。今井卓選手は途中の僅かなペースダウンが響いた。そして復調が見られなかった堀江選手。須藤選手が同数29で終了。あと一匹釣れば30台に乗せられたのが悔やまれる。最後はいつもの元気が無かった池田選手。決勝の男性陣の中の紅一点。ここまで来るだけでも大したもの。称賛の拍手を送りたい。
この結果を受けこの度の優勝と最初の年間優勝者はともに増田選手に決定した。増田選手が非常に誇らしげに表彰台に昇っていたのが印象的であった。続く2位の川岸選手はなんと初のお立ち台。経歴を考えると何故?と疑問を呈すがそれだけこの大会で入賞するのは難しい事の様だ。最後の3位には金子選手。始めての出場で優勝。今回は3位。お立ち台を外さない選手である。前回のは運が良かったとはもう言われない揺るぎない実力者の仲間入りだ。以上を以って今シーズンのレギュラー戦を終了する。残るは特別試合のクラシック戦を残すのみとなった。新型コロナウイルスの感染状況を見て開催はまだどうなるか不透明ではあるがこの度の様な大会になる事を期待したい。
この度の大会を応援頂いているご協賛各社様(順不同、敬称略)
淡水小物釣り工房たなきち、(株)オーナー針、(株)ささめ針、マルキュー(株)、(株)シマノ,
SHIZUKU,つり人社、千葉日報社、育夫工房、菅谷工房、よし工房、工房kS、ぷ助、
壱歩、深澤畳店、蛯原様、渡辺様、増田様 他
※今回壱歩様が大会開催中に展示即売会を開きました。参加者からも非常に興味を持たれ商品も売れていました。フィールドワークも大切です。お客様の意見を聞くのも商品開発には非常に良い事だと思います。ご興味のある方は木村までご一報ください。
優勝の増田選手、準優勝の川岸選手、3位の金子選手。皆さん良い笑顔ですね!
ではまた。
0コメント